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【Star TRain】
Star TRain



メーカーmixed up
シナリオ■■■■■■■■ 8
グラフィック■■■■■■■■ 8
キャラクター■■■■■■■□ 7.5
音楽■■■■■■■□ 7.5
青さ■■■■■■■■■□ 9.5
総合【B+】 78点

青春の痛みはかけがえなく

なんてことない作品でした。ごくごく普通のテーマを等身大のキャラが探す、それだけの話であるというのに、なぜこんなに胸が痛くなるんだろう。特筆すべきは、その「普通」をロマンチックに優しく描いたライターの丁寧さです。

【シナリオ】
かつて星降る夜に出会った主人公の司と年上の少女奈美。長年憧れを抱き追い続けてきた彼女に告白をした司は、晴れて奈美と恋人として歩みを進めることになります。ですが、彼女の気持ちが真の恋心ではないことに気づく司。彼女を想うあまり悩みに暮れる彼が、彼女の幸せを願い夏祭りの夜にとった行動は……。


いいですね。終わってから始まる恋。青春時代の切なさをギュッと詰めたかのような甘酸っぱいテーマがたまりません。誰もが幸せになれる恋愛なんてない、本当にそう思います。 誰かが思いを遂げようとすると必ず誰かが泣くことになる、これが恋愛のシビアなところであり、だからこそかけがえのないものでもあります。そういったテーマに正面からぶつかる本作、とても好感が持てます。

司と奈美が別れて1年後、過去の傷が癒えないまま再び夏を迎える場面から本編スタートとなりますが、1年位ウジウジと平気で引きずるのが思春期の恋愛です笑。

正直、文章のテンポはあまりよくないですね。文章の組み立てに慣れていないといいますか、日常的なシーンには必要性の感じられないシーンも多く、中での会話もだいぶ平坦なため、読むのが面倒になってくる場面がそれなりにあったように思えます。特に飛鳥、蓬ルートはもっとすっきりとまとめられたはずですね。

ですが登場人物、特に主人公の瑞々しさといいますか、等身大さはとても丁寧に描けており、「しっかりしろよ」と思う一方で「ああ、当時確かに俺もこんなふうに煮え切らなかったなあ」と、彼の恋愛における葛藤が非常になつかしく、微笑ましくも感じられました。自分にも思うところがあるからこそ応援したくなる主人公と言えます。男なら誰しも経験している恋愛の痛みを、男なら誰しも理解できうる弱く幼い主人公が葛藤する、ここが本作人気の肝だろうと思います。まあ、ヒロインと別れる都度、長期間に渡り欝寸前まで追い込まれるあたり繊細すぎるとも思わないでもないですが……。


各ヒロインを追いかけます。まずは幼馴染の遠日奏ルート、好きな気持ちが溢れているのに素直になれない幼馴染、主人公が超絶朴念仁ですので、彼女の頑張りを応援するルートでしょうか笑。司同様、等身大の女の子としての丁寧さを感じられるキャラとシナリオでした。

幼馴染が恋人同士になるって、実際にはそうそう無いことだと思うんです。どちらかがどちらかを好きなることも基本は無いと思います。ですから、幼馴染がすんなり恋人に、というギャルゲ的な流れではなく、そういった幼馴染としての距離の取り方の難しさや、司と奈美の過去があるがゆえに踏み込めなかった彼女の葛藤を主軸に据えたのが功を奏していたと思います。思い悩む彼女の心情描写が非常に丁寧で痛々しく、彼女はきっとライターさんにとても愛されていますね。トゥルールートのラストシーンでも司と彼女の「Start Line」として物語は閉じられますし、ライター七烏未奏さんの名前文字を取っているくらいですしね。


貧乏少女夢原飛鳥ルート、親の愛に飢えるヒロインの典型のようなルートでしたかね。幸せに対する絶対的な信念を持つ彼女、最後はその幸せを手にし、母親とも和解し、円満にまとまりました。母親の不器用な接し方や、現実の赤貧生活が、彼女の人生観、自己分析力をしっかりと形作っています。リアルなまでに歳相応の登場人物たちの中で、キャラの可愛らしさに反して唯一少し大人びているのが彼女でした。

優等生神崎蓬ルート、理想の追求がテーマとなっています。各々過去の恋愛を痛みとして抱えながら付き合う二人が、本当に向き合うまでの過程を描きます。これ、凄く青々しくて若さ溢れるテーマですね。そして司を諭すことでストーリーを動かすのが麻衣子でした。確たる思いに自信の持てない司に対して麻衣子が放つ「恋愛なんてそういうもんよ、なんだかんだ気になってんでしょ」という話の導き方は、理想恋愛論からは程遠いものではありますが、実に現実的且つ共感しうるもので、個人的には好感が持てます。

本作通しで言えるのですが、この白鳥麻衣子という友人キャラが、ギャグ、シリアス両面で神々しいまでに生きていて、時に司を強い力で導く関係は個人的に好きな構図でした。そして、飛鳥、蓬とくっついてしまうルートの奏が本当に可哀想なんですよねぇ……。奈美はおろか新参の他ヒロインに司を持って行かれるルートでまで、彼女の後悔描写を描かなくても……僕は胸が痛かったですよ。


そして3ルート消化後に登場する羽田七美ルート。突如司の前に現れる奈美によく似た謎の少女七美との短い生活、心の通わせ合い、そして七美の死、さらに幸せの考察と彼の再スタートが描かれるトゥルールートになります。非常に丁寧に丁寧に「幸せ」というテーマを追い求めますが、僕が「いいなぁ」と思ったのは、幸せの求め方が実に十代の少年少女らしさに満ちていたということです。

「幸せ」という難しいテーマ。20代くらいでなんとなく気づく、日々当たり前に起こっていることの愛しさや周囲の人間の大切さ、そして弱い自分と向きあい認めること……。17,8歳の気づくか気づかないかのギリギリのラインから、それらに気づいていくまでの成長を、哲学的に論理的に格好つけて読ませていくのではなく、とても青臭く手探りに、拙さに満ちた展開で見つけていくんです。ここがいい。

晃先生や高音さんといった大人から司に投げかけられる意見も、良い意味での「大人らしさ」に満ちた、曖昧でそれでいて正しい諭し方で、胸が梳く思いでしたね。

大好きだった奈美との辛い別れ、大好きになれた七美との死別。自分にふりかかったこの試練を受けて、対峙するのはあくまで司自身なんです。自分自身を乗り越えるために、周囲の友人たちの優しさを受けながら幸せのあり方を探ろうとするシナリオの丁寧さは評価です。そしてこれから大好きになるかもしれない奏とのエピローグを見せ、ユーザーに未来を託す閉じ方も非常に演出として良かったですね。


一方で疑問に思ったのは、幕間に入る銀河鉄道「Star Train」の描写の必要性は果たしてあったのか、それから、七美が奈美にそっくりな少女という伏線は是非活かしてほしかった、この二点ですね。ところどころで引き合いに出す宇宙や星空、「幸せ」を探し求めるテーマや、カムパネルラと七美を重ね合わせる設定など、「銀河鉄道の夜」のオマージュとなっているのは言うまでもありませんが、タイトルと設定に引きずられて、シナリオ内にその設定の必然性がイマイチ欠けていたように思えたのは残念なところ。さらに後者、七美と奈美の関係性。司は、奈美に似ていたからこそ七美に関わろうとしたのであって、最終的に二人は全く関係ない存在だったというのは設定的にあまりにも勿体無く、何かシナリオに絡ませてほしかったなぁ、と。

なんといいますか、本作、奈美の使い方が少しもったいないのですね。彼女はオープニングで司の心に傷を落とす役割を負っていて、扱いも一見メインヒロインの様相なのですが、役割は本当にそこまでなのです。以降はほとんど登場せず、登場しても既に新しい彼氏がいたり、司が吹っ切れていたりと、本編からは離れた位置にいる存在となってしまっています。ま、奈美の1年後に七美、そしてさらにその2年後に恐らく奏……と、ヒロインが移りゆく様は、「1ルート1ヒロイン」という美少女ゲーの王道から逸れた、現実に即した良展開だとも思っているんですけどね。


シナリオ担当は七烏未奏さん。上記したとおり文章自体は洗練されておらず拙い印象を受けます。しかしそのキャラに紡がせる言葉の数々はとてもリアルで切なく、ライターさんのこの作品にかける強い思い入れが感じられます。青春真っ只中の登場人物たちと同様、そのシナリオも荒削りながらも純度が高く、微笑ましさを覚える作品ですね。正直それほどよく出来た物語だとは思わないのですが、それでも評価したくなってしまうのは、何度も言いますが、青春の痛みと成長を丁寧に描き上げることに成功しているからです。

僕も、当時抱えていたどうしようもない胸の痛みを、心地良く懐かしい痛みとして思い出してしまいました。



【グラフィック】
原画担当は、やすゆきさん。シンプルめですが、幼すぎず、表情は可愛く、個人的にはとても好きな絵柄です。構図の引いた一枚絵や、立ち絵などアンバランスな部分があることも否めませんが、いい表情を切り取った素敵な一枚絵が非常に多くあります。

それから、話の合間に入る黒板の絵はちょっと必要なかったかな。


【キャラクター】
シナリオでも書きましたが、主人公をはじめとした登場人物の等身大さはとても丁寧に描けています。個人的に一番好きだったのは、幼馴染の遠日奏。気持ちを隠し切れない不器用なかわいさは異常。風音さんの司を探るような不安気な演技もずば抜けて光っていました。さすがだなぁ、と。これまでの風音さんの作品の中で一番かもしれません。

また、シナリオの楔になりきれませんでしたが、奈美も個人的に好きです。ギャルゲらしからぬとても現実的な女の子ですよね。それから、麻衣子、大樹、晃ちゃんといった脇役の活躍どころを豊富に用意している点も「わかって」いますね。


【音楽】
90年代良質J-POPのようなOP「Star TRain」がいいですね。EDも同様の雰囲気で良曲ですし、音楽はいいと思います。BGMも夏をイメージする爽やかなものが多いですね。さほど目立つものはありませんが、全体的にいい意味でおとなしく、作品に寄り添うように貢献しているBGMの数々です。


以上、Star TRainでした。いいタイトルですね。
「きっとみんなのほんとうのさいわいをさがしに行く。どこまでもどこまでも僕たち一緒に進んでいこう。 by 銀河鉄道の夜」


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テーマ:美少女ゲーム - ジャンル:ゲーム

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