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装甲悪鬼村正
装甲悪鬼村正



メーカーNitro+
シナリオ■■■■■■■■■□ 9.5
グラフィック■■■■■■■■■■ 10
キャラクター■■■■■■■■■□ 9.5
音楽■■■■■■■■■ 9
テーマ■■■■■■■■■ 9
総合【S】 94点

正義乱舞祭

まさに読んで字の如く入魂の作品です。「正義」をテーマに添え、本来のニトロらしさを前面に出し泥々に捏ねあげて高く高く積み上げた作品でした。

2009年最高峰と呼ばれる作品ゆえ期待も大きかったのですが、ここまでの完成度を見せられたら諸手をあげるしかないってなもんですね。

【シナリオ】
舞台は少し異なる黎明期近代日本をベースとした国家、大和。この世界における最強兵器は「劔冑」と呼ばれる装甲型の鎧。劔冑を装甲した武者たちは空を舞い、鉄塊をも破壊し、最強の戦闘兵器としてこの時代の軍事を支えています。先の戦争により敗戦国たる大和は現在戦後の混乱期……、圧政を敷く六波羅幕府、大和の占領元でありながらも沈黙を貫く大英連邦を主とするGHQ、権力の奪還を目指す朝廷と、未だ大和の治安は定まらぬ日々。さらに、出現とともにその場にいる全ての人間を殺戮する謎の武者「銀星号」の存在が人々の生活に影を落とします。

そしてそんな謎の武者銀星号にひとり立ち向かう、深紅の劔冑「村正」と、その仕手である警察官、湊景明。果たして村正や銀星号の行動意図とは? 六波羅幕府やGHQの目論見とは? 大和全土を巻き込んだ激動の戦乱が今明けようとしています。


以上、ざっくり粗筋ですね。基本的に主人公は景明なのですが、冒頭第一章においての彼は脇役であり、まずは首都鎌倉に住む高校生たちを主軸として物語が進みます。突如失踪してしまった悪戯好きなリツを、クラスメイトの雄飛、小夏、忠保が捜索するという展開です。

そして、主観的に動いていて完全にメインキャラと思わせていた彼らを惨殺や蹂躙など容赦なく不幸のどん底に叩き落すシナリオは、実に狂った鬱展開でしたね。探し人のリツは既に惨殺済みで登場すらせず、さらにヒロイン小夏を四肢切断してレイプさせるとか、レーサーになる夢を追いかけている忠保の目を潰すとか、主人公格の雄飛を斬首で殺すとか、どんだけだよと。もうホントどんだけだよと。

体験版もここまで、当時かなり話題になっていたことを記憶しています。つかみとしては良くも悪くも巧く出来ていると思います。


つかみの第一章、そして景明を主点に添えるメインストーリーは二章からとなりますね。

とにかく濃ゆいシナリオですが、そのシナリオの構成、各キャラクターの動かし方、緻密によく練られています。各々の登場人物は、それぞれの行動理念をもってしてシナリオにうまく絡んでいますし、さらに、六波羅、GHQ、景明が属する朝廷サイドのパワーバランスのとり方や、覇権を取るための各々の策略などの政治的な思惑も、押し引き絶妙なバランスで描かれます。

そして、長いストーリーに多勢なキャラクターと、読み手にも体力を求める作品ですが、実は起承転結に忠実にのっとった綺麗な構成をしていますね。一、二、三章は、各キャラの境遇や行動を説明することと、銀星号という存在を読み手に訴えかけるためのシナリオ群です。話は別物ですが章の持つ役割は全て共通しています。ここが相当量のボリュームを持った「起」

四章は景明の回想シーンにて話の受けと作品世界の広がりをもたらす「承」。ここで景明の妹の光が銀星号の仕手であり、二体の村正を兄妹で使うことになってしまった経緯が描かれます。大体の伏線が解消され、後半に向けての準備が整う感じですね。

そして以降個別ルートは、六波羅やGHQの面々を絡めた政治的な戦争と、景明と銀星号の因縁を交差させながら話が進みます。すさまじく動的に進む物語と、景明やヒロインに次々と試練が襲い掛かるまさに「転」。ラストは大抵ビターな結末が用意される「結」

上記、起承転結のそれぞれのエピソードの中身各々も、やはり起承転結を綺麗に組み立てた洗練された構成であるのは読めばわかると思います。



さて、「正義」とは何かを貪欲に描くのが本作の肝だと思います。正義という概念は、何をもってして正義とするのか、善だろうが悪だろうが殺人は殺人という真理を突く子供にはわかるまいなテーマですね。

敵をひとり殺すことで味方もひとり殺すことになる「善悪相殺」という恐ろしい縛りを持つ妖甲村正。ですがそれは名工村正一門が、各々の正義と悪は表裏一体にて立場が変わればどちらにも転ぶ、という真理と葛藤を見出してしまった先にあるものでした。

この作品がシナリオ的に成功できたポイントは、「敵味方含めて各々が己の正義を貫いている」、ここにあります。その分ボリュームは凄いですが、シナリオやキャラの描き込みは凄いですよ!



正義を盲信する少女、綾弥一条ルートは、正義のお手本ともいうべき図式、「勧善懲悪」を考察するルートです。正義を語るうえではずせないこのテーマ、上記した真理を証明せんと正義を打とうとする景明と、平和を求めて己の正義を貫く一条の、正義と悪を対比させる最後の一騎打ちシーンは胸が奮えました。敢えてその答えを提示しないビターなラストも良しです。


GHQの大尉、大鳥香奈枝ルート、非常に考えさせられるルートでした。景明は、本来優しい人間でありながらも信じた者たちを村正の呪いにより手にかけ続けていますので、精神的にはもう崩壊しかかっているのですね。すべてが終わった後に自分が「正義に裁かれ殺される」から、自分をギリギリ行動に駆り立てることが出来る。この一点が在ることで彼はなんとか自分の存在を保っているのですね。

しかし彼の状況を鑑み、与えられようとする恩赦に対して、彼は自分の拠り所をなくしかけます。許されること即ち彼が救われることではないのですが、そこで、雄飛の復讐のために景明を絶対殺すと断言する香奈枝の存在は、矛盾するように彼の生きる糧となるのです。この狂気的な場のもたせ方は本当に見事です。正義、裁きを圧倒的な理由から描いたこの構図、鳥肌が立ちました。


そして最も重厚で読み応えのある村正ルート。村正側から見た回想シーン、村正が本来の人間の姿を得る展開、互いを利用しあうのではなく互いを真のパートナーとして戦う決意をする関係性など、劔冑"村正"いう存在に強く焦点が当たります。景明と村正、ともに善悪相殺の真理を受け入れ、そのうえで自分たちはどうあるべきか……、それまでの章や他ルートで葛藤していた道をふたりで模索する展開はメインルートにふさわしい出来です。

また、銀星号の正体である、光が本当は過去の病魔から脱しておらず、銀星号事件や目の前で動いている元気な光は、彼女が深い眠りに入ったときの夢の具現であるというカラクリも鮮やかでした。銀星号の異常なまでの強さ、達観すらある圧倒的な信念、夢物語ほどの野望、それは光の夢であるがゆえの純粋化された思いの具現。非常に美しかった。

ただまぁ個人的には、ラストの地中深くに眠る金神様を呼び起こすくだりから、光が神になってしまうあまりにも派手な流れは、それまでの闇の底を這うようなストーリーを置き去りにして一気にエンターテイメント色が出てきてしまうため、もっと裏を行ってほしかった気はありますね。宇宙空間での戦闘とか笑。

ですが、それくらい無敵極まりない銀星号を倒すのが、許せない自分を先に殺す、つまり自害することで、愛する光を打破するという、作品テーマともいうべき善悪相殺にもとづいた方法だったこと、これには僕は大賛辞を送りたい!! 長いストーリーの中で、景明が呪われた自分をいかに憎んでいたか、そして光をいかに誰よりも大切に思っていたかを丁寧に描いていたからこそ、本当にこのシーンは存在感を放っています。この方法の成功は、必然的に光を景明が愛していたことを証明するため、光も救われるんですよね。思わず目頭が熱くなりました。


まあその後に、村正編と称してエピローグと呼ぶには長すぎるほどのエピローグがあるのですが、これは村正とのイチャラブ展開ですので、オマケ的なもんかと。クライマックスのピークタイムは上記「善悪相殺」を用いた光の打倒シーンです。


以上長くなりましたがシナリオ雑感ですね。奈良原一鉄さん、はじめてプレイしましたが、構成立てのうまい方ですね。もう少し全体の肉をそぎ落とせればもっと広く愛されるライターさんになると思います。



【グラフィック】
ニトロプラスですから、大工数をかけて素晴らしいゲームに仕上げてくるであろうことは想像できていましたが、それにしてもこのグラフィック、ゲームデザインは素晴らしい。作品の雰囲気を最大限に引き出す全体的なデザインはさすがのニトロですね。

また、世界観に準じて縦読みなのですが、これも最後まで気にならず読み進めることができました。気になる人は気になるかもしれません。

さらに、一枚絵のクオリティの高さ、枚数の多さも言及しておきたいところですね。なまにくATKさんですか、うまいですねえこの方。なまにくあったかい、と読むのですか笑。ずーっとニトロでは彩色担当だったのですが、本作にて初めてのキャラデザ、原画担当とのことです。もともと素晴らしい実力をお持ちの方であったとは思うのですが、初作品にてこの仕事ぶりは感嘆ものです。肉感的でバランスのいいキャラクターと、表情の作り方、構図、どれをとっても高い次元でまとまっています。

劍胄などの3Dまわりも力が入っていますね。グラフィック点は総合的に文句ナシの出来でしょう。


【キャラクター】
まず! 蜘蛛かわいいよ蜘蛛

ただの鉄の鎧だと思っていた蜘蛛が、あんなに可愛いとは。後半に出自が明かされ人間の形を取ることに成功もしますので、そこからの村正は可愛らしかったですね。若かりし頃に劔冑となったため、若干未熟なところも好印象です。

主人公の湊景明、彼はその背負った呪いや本来のキャラから、銀星号を打破する目的以外にはさして能動的ではないんですね。そこが上手かった。普段は恐ろしくダウナーながらも、使命に突き動かされて苦しみながらも懸命に行動している様が怖いくらい丁寧に描けていて痛々しかったですね。

また、善悪の表裏一体を謳う物語であるだけに、サブキャラクターの描きこみも非常に深かったです。一見敵サイドに見える六波羅面々やGHQ各々のキャラクターにも彼らなりの行動動機がしっかりと説明されます。特に六波羅の四公方である、茶々丸、童心、獅子吼、雷蝶、彼らのキャラ立ちといったら! 各々の行動理念、人間臭さ、そして勇猛さといった要素は四者四様に目を見張るものがあります。景明はまだしも、ヒロイン勢は哀しいかな完全に食われていました。

話の楔役となる湊光も良かったな。彼女の正義の描き方は狂気的で美しく、圧倒的です。景明に、兄であると共に父としての愛情をも求め、その歪んだ倫理観を正当化するために神になろうするというこの発想。ライターの力量を感じさせます。


【音楽】
音楽も作品世界観を底上げする雰囲気のあるBGMばかりです。日常シーンは和楽器やコントラバスを用いた生楽器の音色を中心に添えた綺麗なBGMが、戦闘シーンはニトロ本来の得意とするゴリ押しのギターロックが、うまいこと場面場面で機能していたように思えます。

歌付曲は5曲。ニトロ節全開で熱を上げるOP「MURAMASA」は作風によく合っていますね。個人的にはイントロが切なくEDや泣き所で流れる「落葉」、ベースを走らせるサビでの突き上げが格好よく且つ使いどころがうまい「The Call」が好きです。


以上、バルドスカイと並び、2009年度最高峰と呼ばれる装甲悪鬼村正でした。全方位的にニトロプラスの底力を見ました。合掌。



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テーマ:美少女ゲーム - ジャンル:ゲーム

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